湿度が低いと化粧水の潤いが逃げる?──セラミドが支えるモイスチャーバランスの話

潤ってるのに、なんだか乾く

最近、自作の化粧水をつけても
しばらくすると肌が
つっぱるような感覚がありました。

しっかり保湿したはずなのに、
時間が経つとカサついたり
頬がぱりぱりするような感覚。

「もしかして処方を変えた方がいい?」

そう思って成分を見直していたとき
ふとあることに気づいたんです。

それは
“潤い”は湿度に左右される
ということ。

考えてみれば当たり前の話なのに、
まったく意識していませんでした。

水は「環境」によって逃げていく

化粧水のメイン成分は
言うまでもなく“水”。

市販の化粧水でも、
成分表のいちばん最初に書いてあるのは
精製水やローズ水、温泉水など。

「肌にやさしい」「ナチュラル」といった
やわらかいイメージのある素材ばかりです。

でも、どれも
結局は“

たとえば、
手を洗ったあとにそのまま放っておくと
乾いてカサカサになることがありますよね。

あの状態こそが、
水だけでは潤わない」という現実を
一番わかりやすく示している気がします。

どんなに
肌にやさしそうな種類の水を使っても

それが肌に
とどまる力”を持っていなければ

乾くスピードはほとんど変わりません。

湿度が高い雨の日は、
空気中の水蒸気とのバランスで
肌表面の水がある程度とどまってくれます。

けれど

冬やエアコンの効いた室内のように
湿度が40%を下回る環境では

肌表面の水は
どんどん蒸発していく。

「乾燥する季節は化粧水が効かない」
と感じるのは、単に

肌がわがままになったわけではなく
環境に負けているだけ
なんですよね。

「水をつかむ力」

市販の化粧水を見比べてみると、
どれも“保湿成分”として

代表的過ぎるグリセリンを筆頭に
PCA-Na(ピロリドンカルボン酸ナトリウム)
やBG(ブチレングリコール)
などが入っています。

私はグリセリンが苦手なので
グリセリンが入っている物はパス
してしまうのですが、

肌の天然保湿因子(NMF)の
ひとつであるPCA-Naは
水になじみやすく

しっとり感を出すにはとても優秀。

だから

「保湿=PCA-Na」みたいに
思っていた時期もありました。

でも実際のところ、
PCA-Naのような水溶性保湿剤だけでは

水を“抱える力”はあっても、
“逃がさない力”までは弱い
んですよね。

つまり

いくら頑張っても、湿度が低い環境では
せっかく与えた水分が
どんどん空気中に逃げていく・・・

言い換えれば、

“空気中の水分”を利用して
潤いを保っているということ。

つまり・・・

空気が乾いていれば、
引き寄せられる水分そのものが
少ないということ。

水をつかむ効果に優れていても、
湿度が低い環境では
本来の力を発揮しきれない
のです。

また、

グリセリンやBGなどの
多価アルコール系の保湿剤は

湿度が40%を下回ると
保湿力が低下する
という
データをいくつも見つけました。

「なるほど、だから冬になると
化粧水を“飲み込まない”感じがするのか…」

と妙に納得です。

湿度に強い保湿の組み立て方

じゃあどうすればいいの?

そう思って成分表を見直しました。

ポイントは、
「吸湿性」だけに頼らず

“水を抱え込む”タイプ
組み合わせること。

たとえば、こんな成分です

トレハロース:砂漠の植物を守る糖のチカラ

トレハロースは、砂漠や乾燥地帯の植物が
水がなくても枯れずにいられる
秘密のひとつといわれています。

水分を抱え込む力」に優れ、
細胞内の水分を安定させる
働きがあるとされています。

つまり
空気中の湿度に頼らず

“自分の中の水分”を
しっかりキープできる存在。

これが
湿度に左右されにくい保湿」をつくる
鍵なんですね。

ヒアルロン酸:自重の数百倍の水を保持

ヒアルロン酸も同じように、
高い保水力を持つ代表的な成分。

ただし分子量が大きいタイプは
肌表面に“膜”をつくって潤いを守るだけで

角層の奥まで届きにくい
という面もあります。

だから私が自作化粧水を作る時は

分子量の違うヒアルロン酸を
組み合わせたり、
水溶性と油溶性の保湿剤を
それぞれ配合するようにしています。

“水を抱える層”と
“水を逃がさない層”

両方を意識することが大切なんですよね。

セラミド:油のようで、実は「保湿の要」

セラミドは「脂質」(油溶性成分)
に分類されますが、
単なるオイルではありません。

実際は脂質と水分の“あいだ”に存在して、
角層のすき間を埋めるように
並んでいます。

これがいわゆる「ラメラ構造」。
肌のバリア機能の中核を担っている部分です。

水にも油にもなじむ
「両親媒性」という性質をもち

角層のあいだで
水の薄い膜と脂質の膜を交互に重ねることで

まるで、ミルフィーユのように
水分を逃さず抱え込む。

これが
湿度に左右されない保湿”の要。

このラメラ構造は、
単なるオイル膜とはまったく違って

水分を“閉じ込めながら”
必要に応じて“出し入れする”

極めて繊細なバランスで成り立っています。

だから

セラミドを補うことは
「油を塗る」というよりも、
肌の中の水の通り道を整える」ことに近い。

乾燥して硬くなった角層をほぐし、
水分の巡りをスムーズにしてくれる。

それが
セラミドの本当の役割なんだと感じます。

ちなみに、

乾燥や赤みが出やすい時ほど、
この“ラメラ構造”が
乱れていることが多いです。

「潤いの設計」は、環境とバランスの理解から

実際に使うときの順番もポイント

化粧水で“水”を与え
アミノ酸やPCAで“つかまえ
トレハロースやセラミドで“抱え込む

最後に

スクワランなどの軽い油分で
フタ”をしてあげると

肌の上に小さな保湿環境が完成します。

まるでミニ温室みたいに
自分の肌の中だけは湿度が保たれる

そんな状態を作りだすイメージで
保湿を完了させます。

「潤い」は環境ではなく、設計で守る

私が最近ようやくわかってきたのは、
化粧水は
“成分”だけで完結しないということ。

同じ処方でも、
湿度30%の冬と、湿度70%の梅雨では
まったく違う働きをする。

これを理解しておくだけで、

湿度が高いときは
“吸湿性”の保湿剤が力を発揮し

湿度が低いときは
“抱水性”や“閉じ込める力”のある成分
というように

肌が「乾く」と感じたときは、
ただ、保湿剤を“足す”よりも

環境を整える”という視点を持てます。

さいごに

どちらか片方に偏ると、
一時的にはうるおっても時間が経つと乾く。

まさに私が感じていた
“つっぱり感”の正体でした。

保湿は、「水を与える」でも
「油を塗る」でもなく

“水分を環境から守り、
肌の中で循環させる仕組み”を作ること。

そう考えるようになってから、
化粧水づくりの視点が
大きく変わりました。

これまで

「潤い=与えるもの」
と思っていたけれど、

今の私は

「与える」ものではなく、
「逃がさないように整える」
もの。

そう考えています。

湿度に左右されない肌は、
水分を“閉じ込める構造”を持てている肌。

モイスチャーバランスの本質は、
その仕組みを育てることに
あるのではないでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございました。

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