~ジオール──BGやPG、DPGを深掘りして見えてきた“水と油の橋渡し役”の正体

化粧品の成分表を眺めていると
「BG」「PG」「DPG」といった
アルファベットの略称が目に入ります。

一見するとただの
保湿剤や溶剤のようですが

調べていくうちに
「ジオール」という言葉と
結びついていることに気づきました。

私は、こういう化学的な背景を知ると
「面白い!」とワクワクしてきます。

化粧品を支えている成分たちの姿を
深掘りしていくと、

水と油の世界をつなぐ
“橋渡し役”のような働きをしている
ということが見えてきたのです。

この記事では、

「グリコール」
「ジオール」
「プロパンジオール」
「ジプロピレングリコール」などの関係をまとめながら、

化粧品の裏側に潜む化学の面白さを
シェアしてみたいと思います。

今回はちょっとマニアックなお話です。

グリコールとジオールの関係

まず整理したいのが
「グリコール」と「ジオール」。

  • ジオール(-diol):
    分子内に水酸基(–OH)が2つある化合物のこと。二価アルコールとも呼ばれます。
  • グリコール(glycol):
    ジオールの慣用名のひとつで、特に隣り合った炭素に–OHがついた1,2-ジオールを指すことが多いです。

つまり、

  • 化学的には「ジオール」という分類が正確
  • 日常的・化粧品表記では「グリコール」と呼ばれることが多い
  • 厳密には1,2-ジオールの慣用名が「グリコール」と考えると理解しやすい

化粧品で見ると、ほぼ、
「グリコール=ジオール」
と考えてほぼ問題ありません。

例えば、

  • エチレングリコール = エチル-1,2-ジオール
  • プロピレングリコール = プロパン-1,2-ジオール
  • ブチレングリコール = ブタン-1,3-ジオール または ブタン-2,3-ジオール など

といった具合です。

日常的には「グリコール」という
呼び方のほうが浸透していますが

化学的には「ジオール」が正式な表現です。

1,2-プロパンジオールと1,3-プロパンジオールの違い

ここが個人的に面白いと感じたポイントです。

「プロパンジオール」とひとことで言っても
実は分子の構成位置が違うだけで性質が変わります。

含まれている炭素数は同じでも、
水酸基(–OH)の位置や作られ方によって
性質が変わるんですね。

  • 1,2-プロパンジオール(PG)
    • 通称:プロピレングリコール
    • 主にコスト削減の理由で石油由来で合成されることが多い
    • トウモロコシなどの植物由来で発酵させて作る方法もあり、ナチュラル系化粧品では「植物由来PG」と表記されることがある
    • 保湿性が高いが、敏感肌の人には刺激になることもある
  • 1,3-プロパンジオール(1,3-PDO)
    • 元々は植物由来(トウモロコシなどの糖を発酵)で作られていた
    • ただしコストや量産性の理由で、石油由来で合成される場合もある
    • 刺激が少なく、さっぱりした使用感
    • ナチュラルコスメでは「植物由来1,3-PDO」と明記されることが多い

炭素数はどちらも3つですが
OHの位置や由来によって
使用感やイメージが変わります。

化粧品成分表に
「プロパンジオール」と書かれているときは、
どのタイプで作られているかを確認すると
肌質や好みに合った選択がしやすくなりますね。

DPG(ジプロピレングリコール)の正体

次に気になったのが「DPG」です。

正式名称は
ジプロピレングリコール(Dipropylene Glycol)

一見「ジオールが2つあるのかな?」と
思いましたが、そうではありませんでした。

DPGは
プロピレングリコール(PG)が
2つつながってできた分子 なのです。

  • 「プロパンジオールが2つある=ジプロパンジオール」ではなく、
  • 「PGが2つ連結した=ジプロピレングリコール」

この違いを理解すると、
成分名の意味が腑に落ちます。

DPGはPGに比べて分子が大きく、
揮発しにくいため刺激が少なくマイルドです。

香料やオイルを溶かす性質にも優れており、
香水やスキンケア製品で幅広く使われています。

BG(ブチレングリコール)と原料の違い

同じ〇〇ジオールでも、
BGとDPGでは原料が異なります。

  • BG(ブチレングリコール)
    • 植物由来(トウモロコシやサトウキビ)で発酵して作られることが多い
    • ナチュラルコスメで「植物由来BG」と表記されることもある
  • DPG(ジプロピレングリコール)
    • 主に石油由来(プロピレンから合成)
    • 安定性が高く、長期保存でも変質しにくい

保湿剤や溶剤としての性質は似ていますが
由来や安定性によって
使用感やイメージに差が出ます。

ジオールは水と油の“橋渡し役”

ここまで整理すると、
ジオール類の大きな特徴が見えてきます。

  • –OH基を2つ持つため水となじみやすい
  • 炭素骨格を持つため油とも相性がある
  • 完全な水溶性でも油性でもない

つまり、

化粧品にとって
水と油の間に立つ“中間的な存在” なのです。

この特性により、
化粧品では次のような役割を果たします。

  1. 保湿剤:肌にうるおいを与える
  2. 溶剤:有効成分や香料を均一に溶かす
  3. 防腐補助:水分活性を下げて微生物の繁殖を抑える

目立たないけれど
化粧品全体を支える縁の下の力持ちと言えます。

スキンケアに活かす!

この知識を持つと、
スキンケアの選び方にも活かせます。

  1. 成分表をチェックしてみる
    • PGか1,3-プロパンジオールかで使用感が変わることがあります。
    • 敏感肌の方は選べるなら植物由来1,3-PDO配合製品を選ぶのもおすすめです。
  2. 保湿剤の種類を意識する
    • BGは植物由来でやわらかい使用感
    • DPGは安定性が高く、香料や油性成分をなじませやすい特性があります。
  3. 水と油のバランスを意識したアイテム選び
    • 化粧水や美容液にはジオール類がうまく配合されているものを選ぶと、成分同士のなじみや肌なじみが良くなります。

まとめ

化粧品の成分表を眺めて
「BG」「PG」「DPG」と並ぶと、
最初はただの略語に見えます。

でも深掘りすると、

数字や構造の違いで
使用感や刺激性が変わること

そして

水と油をつなぐ“橋渡し役”として
化粧品を支えていることがわかります。

成分名や由来だけでなく
構造や性質を知ることで、
スキンケアの楽しみ方が広がります。

小さな分子たちが化粧品全体を支え
肌に触れる体験を整えてくれている

そんな風に意識すると、
毎日のスキンケアも少し特別に感じられませんか?

今回もお読みいただき、ありがとうございました!